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交通事故治療で健康保険を使うべき場合

  病院での治療には、健康保険を使う「保険診療」と、これを使わない「自由診療」とがあります。

 そして、診療の「値段」は、「保険診療」では、国が一律に定めていますが、「自由診療」では、それぞれの病院が自由に定めており、その結果、同じ治療を受けても、「自由診療」の方が「保険診療」よりも高額になることが通常です。

 交通事故被害にあって、病院で治療を受ける場合、治療は、健康保険を使わない「自由診療」で行われることが多いようです。

しかし、以下のような場合には、交通事故診療でも、窓口で健康保険証を提示して「保険診療」とした方が得策です。

 

1、大きな「過失相殺」が想定される場合

 「過失相殺」とは、事故原因に関して被害者側にも過失があるとして、その分を賠償額から差し引かれることを言います。過失割合として、20:80とか、40:60とかいう場合です。たとえば、損害総額が1000万円である場合でも、被害者に40%の過失があれば、受け取れる金額は損害総額1000万円から過失相殺分の40%相当額が差し引かれて、「600万円」ということになります。

大きな「過失相殺」がなされる事案の場合には、治療費についても、過失相殺の対象となるため、健康保険を利用して治療費を安く抑えるのが得策ということになります。

 

2、加害者の賠償資力に疑問がある場合

これは、たとえば、加害者の車が無保険といったような場合です。この場合には、実際に加害者から賠償金を受け取れるかどうかわかりませんから、治療費はなるべく安く抑えるのがよいということになります。

 

 なお、最近の自動車保険に特約として付されることが多い「人身傷害補償特約」では、治療は「健康保険を使うようにつとめる」ことが義務づけられていますので、上記1,2のような場合で、自分の自動車保険の「人身傷害補償特約」を利用する場合には、保険診療を選択すべきことになります。

 交通事故外傷の場合、病院によっては窓口で「保険診療はできない」等と言うところもあるようです。もちろん、治療の中には、自由診療でしか行えないものもあり、怪我の内容等によっては、そのような治療が効果的な場合もあるでしょう。

 窓口で保険診療に難色を示された場合には、その理由をよく尋ねたうえで、弁護士等専門家に相談することをお勧めします。