· 

勤務中の事故(加害者)

Q.仕事で会社のクルマを運転していて停車中のクルマに追突してしまいました。被害者のケガやクルマの損害などの全額を賠償しなければならないのでしょうか?

A.仕事で会社のクルマを運転中、過失により交通事故を起こした場合、加害者本人が被害者のケガやクルマの損害を賠償する責任を負います。しかし、加害者を使用していた会社も原則として損害賠償責任を負うことが法律で定められています。このことから、加害者本人か会社のいずれかが、被害者に対して賠償金を支払うことになります。

  使用者(会社)が賠償金を支払った場合、今度は、被用者(従業員)に対して、支払った賠償金を請求(求償)することもできます。ただし、使用者(会社)からの求償に対しては、勤務状況等によっては、被用者(従業員)が全額を賠償しなくてもよい場合もあります。

  クルマ社会では勤務中の事故は頻繁に起こりますから、交通事故を起こさないよう注意することは重要ですが、万一、加害者になってしまった場合にも、交通事故の専門家である弁護士にご相談ください。

 

1 勤務中に交通事故を起こしたら

  仕事で会社のクルマを運転中、過失により交通事故を起こした場合、加害者本人が被害者の身体やクルマの損害を賠償する責任を負います。

  しかし、加害者本人に十分な資力がない場合、被害者は十分な救済が受けられないことになります。そこで、加害者を使用していた会社も損害賠償責任を負うことが、法律で定められています。

  これは、被害者が賠償金を二重取りできるのではなく、会社のクルマを運転していた加害者本人か、加害者を雇っていた会社かのいずれかが、被害者の身体やクルマの損害を賠償しなければならないということです。

 

2 使用者が損害賠償をしたら

  使用者(会社)は、被用者(従業員)による交通事故の賠償金を支払った場合、被用者(従業員)に対して、支払った賠償金を請求すること(求償)ができます。しかし、加害者を使用していた会社も損害賠償責任を負うのは、他人に損害を与える可能性がある自動車の運転をさせていたことによるものですし、高額の賠償金を被用者に負担させるのは酷といえます。

  そこで、判例では、使用者から被用者に対して請求できる範囲は、「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度」で請求できるとされています。

  例えば、主として軽トラックの運転に従事していて臨時にタンクローリーを運転するよう命じられて事故を起こした場合、会社が車両保険に加入しておらず、使用者の勤務成績は普通以上であったとして、被害者の損害と会社のタンクローリーの損害のうち1/4が限度とされた事例があります。

 

3 会社から求償されたら

  「損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度」は、事業の性格・規模・施設の状況、被用者の業務の内容・労働条件・勤務態度・加害行為の態様、使用者の配慮の程度など諸般の事情に照らして決められます。

  したがって、具体的な金額は事案によって異なりますが、被害者のケガやクルマの損害などの全額を被用者が支払わなければならないケースは少ないといえます。

  被害者の方への賠償をすることは重要ですが、会社からの不当な求償に応じる必要もありません。また、賃金は全額を支払う必要がありますので、交通事故の損害賠償分を給与から天引きすることもできません。

クルマ社会では勤務中の事故は頻繁に起こりますから、交通事故を起こさないよう注意することは重要ですが、万一、加害者になってしまった場合にも、交通事故の専門家である当事務所にご相談ください。