Q.内縁の夫がひき逃げにあい、亡くなりました。私達は、婚姻届こそ出していませんが、夫の連れ子と共に家族として長年一緒に生活してきました。私は、内縁の妻として、政府の保障事業に填補金を請求できないでしょうか?
A.「内縁」の配偶者(内夫や内妻)であっても、他方から扶養を受けていれば将来の扶養利益を失うことになりますから、「政府の保障事業」に填補金を請求できます。
ただし、政府が「内縁」の配偶者に填補金を支払った場合は、その分が他の相続人(例えば、夫の子)への填補金の支給額から控除されるなども問題もあるため、ご注意ください。
「内縁」の配偶者を含めてご家族が円満に暮らしていくため、死亡事故については交通事故・相続の専門家である弁護士にご相談ください。
1 「政府の保障事業」の「被害者」
ひき逃げなどクルマの保有者がわからないなど自賠責保険を用いることができない場合に政府(国土交通省)が加害者に代わって政令で定める金額の限度で「被害者」に損害の填補を行う制度が「政府の保障事業」です。
そして、「政府の保障事業」に対して填補金を請求できる「被害者」とは、自動車の保有者に対して損害賠償の請求をすることができる者をいいます
2 「内縁」の配偶者の取扱い
「内縁」とは、夫婦となる意思をもって社会通念上夫婦としての共同生活を送っていても婚姻届をしていない関係をいいます。「内縁」の配偶者は、正式な配偶者に準じて取り扱われることがあります。
「内縁」の配偶者は、他方から扶養を受けていれば、将来の扶養利益を失うことになるため自動車の保有者に対して損害賠償の請求をすることができるので、「政府の保障事業」に対して填補金を請求できる「被害者」に当たります。
3 「内縁」の配偶者と被害者の相続人
人身事故の被害者が亡くなった場合には、被害者の相続人は、被害者の地位を受け継ぐので、「政府の保障事業」に填補金を請求できます。
ただし、相続人の請求に先立ち、政府が被害者の「内縁」の配偶者にその損害(逸失利益)の填補金を支払ったときは、相続人にてん補すべき死亡被害者の損害(逸失利益)の額から「内縁」の配偶者への既払額が控除されるという判例があります。
この判例の考えによると、亡くなった被害者の相続人は、「内縁」の妻に支払われた金額分を差し引かれた金額しか「政府の保障事業」を請求できないことになります。
3 「内縁」の配偶者がいる場合の損害賠償請求
判例で問題となった事案は、相続人が被害者に扶養されていませんでしたから、「内縁」の配偶者を優先させたとも考えられます。このことから、相続人が被害者に扶養されていた場合、相続人と「内縁」の配偶者の損害額の配分を考慮して「政府の保障事業」を請求すべきでしょう。しかし、判例の事案では、「内縁」の配偶者がいることを相続人が知らず、「内縁」の関係にあることも問題となったので、相続人と「内縁」の配偶者が事前に話し合う機会もなかったようです。
死亡事故では、ご家族の悲しみも大きいですが、相続問題も生じて法律問題も大きくなることが多いといえます。「内縁」の配偶者は相続人に準じた取扱いがなされますから、他の相続人と財産をめぐるトラブルも生じてきやすくなります。
「内縁」の配偶者を含めてご家族が円満に暮らしていくため、死亡事故については交通事故・相続の専門家である当事務所にご相談ください。