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泥棒運転と運行供用者責任

Q.買い物で駐車場にとめていたクルマが盗まれ、盗んだ人が交通事故を起こして相手にケガをさせてしまいました。私も被害者に損害賠償をしなければならないのでしょうか?

 

A.クルマの持ち主と無断で運転した者との間に雇用関係などがない場合は「泥棒運転」とよばれます。「泥棒運転」であっても、自動車の運行によって利益を得ている場合に負う「運行供用者責任」(自賠法3条)により被害者に損害を賠償しなければならない場合があります。

例えば、人が自由に出入りできるショッピングセンターの駐車場にドアに鍵をかけずエンジンキーをつけたままにしておくと、持ち主が第三者にクルマを運転されてもよいと認めていたとされて、交通事故の損害賠償をしなければならない場合があると考えられます。

「泥棒運転」を防止するためには、当然ですが、駐車する際にエンジンキーを抜き、ドアに鍵をかけることが大切です。いつも行く店、勤務先の駐車場などでは気が緩みがちですが、たとえ短時間であってもクルマから離れるときは鍵を忘れないようにしましょう。

 

1 「泥棒運転」と「運行供用者責任」

クルマの持ち主と無断で運転した者との間に雇用関係などがない場合は「泥棒運転」とよばれます。

「泥棒運転」の場合、クルマの持ち主と運転者との間に雇用関係がないので、「使用者責任」(民法715条)を負いません。

しかし、被害者が十分な救済を受けられるよう、自動車の運行によって利益を得ている場合に負う「運行供用者責任」(自賠法3条)により、「泥棒運転」であってもクルマの持ち主が責任を負う場合があります。

 

2 「泥棒運転」でクルマの持ち主が「運行供用者責任」を負う場合

「泥棒運転」でクルマの持ち主が「運行供用者責任」を負うのは、(1)自動車の運行を支配・管理することができ、(2)第三者を監視・監督すべき立場にあったといえる場合です。

例えば、タクシー会社が、クルマのドアに鍵をかけず、エンジンキーを差し込んだまま、自己の駐車場の道路に近い入口付近に長時間駐車させていたところ、タクシーを盗んだ第三者が約2時間後に事故を起こした事例で、「運行供用者責任」を負わないとした判例があります。この事例では、駐車場が警備員のいる塀に囲われていて、客観的に第三者の自由な立入を禁止する構造・管理状況にあったので、自動車の運行を支配・管理をしていたのはタクシー会社ではなく盗んだ人で、タクシー会社が盗んだ人を管理・監督すべき立場になかったといえます。

反対に、市街地にある市道に面した出入り自由な家の敷地内に、クルマのドアに鍵をかけずエンジンキーをつけたまま駐車していたところ、クルマを盗んだ第三者が約1時間後に起こした事故について、第三者がクルマを運転してもよいと持ち主が認めていたといえるとして、損害賠償を認めた裁判例があります。

このことから、人が自由に出入りできるショッピングセンターの駐車場にドアに鍵をかけずエンジンキーをつけたままにしておくと、盗まれたクルマの持ち主も交通事故の損害賠償をしなければならない場合があると考えられます。

 

3 「泥棒運転」の防止

「泥棒運転」を防止するためには、当然ですが、駐車する際にエンジンキーを抜き、ドアに鍵をかけることが大切です。いつも行く店、勤務先の駐車場などでは気が緩みがちですが、たとえ短時間であってもクルマから離れるときは鍵を忘れないようにしましょう。