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ひき逃げ(救護措置義務違反)について

最近、「ひき逃げ」の話題をよく耳にします。皆様も「ひき逃げ」という言葉はご存じかと思いますが、その法律上の意味合いについては意外と周知されていません。そこで、今回は「ひき逃げ」すなわち「救護措置義務違反」についてご説明致します。

1 救護措置義務とは

 

交通事故があったときは、その事故にかかわる車の乗務員は、直ちに車の運転を停止して、負傷者を救護し、道路の危険防止等の措置を講じなければなりません。これが、法律上「救護措置義務」と言われている義務で、道路交通法72条1項前段で規定されています。

 

2 救護措置義務が生じるケース

 

救護措置義務が生じるケースは、交通事故の責任の有無とは関係しません。例えば、救護義務は、事故にかかわる車の運転者だけでなくその同乗者にも発生します。さらに、「事故にかかわる車」であれば、例えば、追突された車(いわゆる被害者)であったり、非接触の事故(自車にぶつかりそうになったバイクが勝手に転倒した事故など)であっても救護義務が生じます。

 

3 救護措置義務違反のペナルティー

 

そして、救護措置義務違反に対しては、大きなペナルティーが科されます。

すなわち、救護措置義務違反に対する法定刑は、前記のように事故に責任がないケースであっても5年以下の懲役または50万円以下の罰金とされ、事故に責任があるケースでは10年以下の懲役または100万円以下の罰金とされます(道路交通法117条)。

これは、窃盗罪の法定刑(10年以下の懲役または50万円以下の罰金)と比較しても決して軽くありません。

 

4 おわりに

 

救護措置義務違反については、普段は犯罪などとは全く縁がない人が、事故に関わってしまった際に怖くなって現場を去ってしまったなどのケースがあります。それでも、救護措置義務違反に対する法定刑は軽くなく、他に大きな問題のない方(前科・前歴がない方、任意保険等に加入されている方など)であっても正式裁判がなされるケースも少なくありません。

 

そこで、車を利用される皆様は、救護措置義務違反についてしっかりと理解していただくとともに(自動車教習所での学習だけでは不十分かもしれません)、万が一そのような疑いをかけられている場合にはお早めに専門家にご相談いただくことをお勧めいたします。

最終更新日:2018/09/21

著者紹介

弁護士 田代 隼一郎 

おくだ総合法律事務所 所属 

平成24年 弁護士登録  福岡県弁護士会所属 

九州大学法学部卒  大阪大学大学院高等司法研究科修了