こんにちは弁護士の田代です。今回の動画では2020年4月1日からの自賠責保険の改正について解説いたします。
2020年4月1日以降、自賠責保険の内容が改正されておりまして、よく知られてるのは保険料が安くなった点は話題になりました。
もう一つ重要な改正として、補償が手厚くなっていることもございます。これについてはあまり知られてなくて、例えばインターネットなんかで自賠責保険の補償内容を調べると改正前の情報が出てきたりすることもみられます。そこで、そういった時に誤解のないように皆様に改正内容について説明したいと思います。ちなみに2020年4月1日からの改正内容ですので、2020年 4月1日以降に発生した交通事故に対してこの改正の内容が反映されます。2020年3月末までの事故については改正前の補償が反映されますのでこの点ご注意ください。
特にこのタイミングでご説明したのが、怪我をして今まで治療をされてきて、ぼちぼち補償の話に入るとかそういう方も多いんじゃないかと思いますので、よかったらこの機会に頭を整理してください。
1 入通院慰謝料
改正内容を説明していきますと、まず大きな点として慰謝料の金額が少し増えました。慰謝料というのは、事故で怪我をして、それによる苦痛なのですが、この人の苦痛というのは外から見ることはできません。残念な話ですけれども、そこで自賠責保険では何日病院に通った、あるいは何日入院したのか、そういった基準で日額いくらという計算が取られます。そして改正としては、日額4200円がこれまでの補償でしたが、これが日額4300円と増えております。
100円ということで金額として大きな開きはないんですけれども、事故が起きて、例えば延べ50日通院しました。これぐらい通院される方は割といるんですよね。例えば2日に1回、50日通院した時には、ややこしいんですけれども、実際に通院した50日を2倍にして計算して、掛ける4200円だとか4300円とそういう計算を取りますので、そうすると金額としてそれなりの差が出てくるという点で良い改正かなという風に思っております。
2 休業損害
また同じようなところで、休業損害ですね。これも日額5700円だったのが、日額6100円に増額されております。これについても実際に休んだ日、あるいは休んだと認められる日、という基準なんですが、例えば主婦の方などは実際に通院した日、これが主婦・家事の休業だとそんな形で計算されることがままありますので、そういった意味ではそれなりの大きな違いになってくるんじゃないかと思います。
今回の自賠責保険の改正内容は、この2点が皆様にとってよく問題になる点ですので特に頭に入れておいてください。
3 入通院看護料
それ以外については比較的大きな事故の場合に問題になるんですが、一つが入院したり通院した時に、家族の方などが看護をする必要が出た場合の補償です。
これについても、入院看護の場合には日額4100円だったのが4200円というふうに金額が上がっておりまして、通院看護あるいは自宅で看護された時には、入院看護の半分という金額ですが、こちらも増額されております。
看護が必要と言うと、入院したりとかあるいは骨折したりとかで一人では通院できないケースなので、大きな事故の時に問題になりやすいのかなと思います。
4 死亡による損害
次の改正点は、さらにお気の毒な事故ということになりますが、死亡による損害ですね。これも補償が手厚くなっておりまして、一つが慰謝料、亡くなったことによる精神的損害に対する補償ですね。これが 350万円だったのが400万円に上がっております。慰謝料(本人)と書いておりますのは、例えば、他に奥さんだとかお子さんだとかいらっしゃる時には、また別途慰謝料は増額されるんですよね。550万円だったかな、増額されます。そういったところで今回はご本人の分ということで、例えば身寄りがない方だったりとか、そこは極端な話ですけれども、家族以外でご本人が苦痛を受けて亡くなったことへの苦痛、それを相続された方だとかそういった形で請求する場合、この時の金額が増額している。
また葬儀費用ですね、これもご本人というよりもその相続人だとか身内の方が負担されるということになるのが基本ですが、これも従前60万円が原則だったところが100万円に増額しております。
5 後遺症による損害
さらにもう一点、後遺症による損害、これについても増額がございまして、後遺症というのは1級が一番重いのですけれども、14級が比較的軽いということで、そういった順になりますが、12級から上の慰謝料について、これはそれぞれ等級ごとに増額されている。
これが自賠責保険2020年4月1日からの改正内容の、補償に関しての改正の全体像です。
ご注意いただきたいのが、これは非常に残念なところですけれども、限度額は変更がないと、ここはご注意ください。
よく知られてるのが自賠責保険で怪我をされた方は、治療費だとか慰謝料だとか休業損害とか全部ひっくるめて120万円までしか自賠責保険から補償されないと、そういう限度額がございます。
また死亡、亡くなった方に対しての賠償は最大3000万円。後遺症については1級・2級など等級にもよりますが、一番重い場合の限度額で4000万円と限界がございまして、結局ここの変更はございません。
そのため大きい事故だとか、あるいは後遺症が無い事故でも限度額いっぱいになってしまうことってままございますので、そうなった時には結局内訳が変わってくるというぐらいで、限度額を超える補償を自賠責保険からは得ることはできないことになります。
自賠責保険では十分な補償ができないという時には、事故の相手にしっかりと賠償してもらう必要はございますので、是非弁護士にご相談いただければと思います。
今回の動画では自賠責保険の改正について解説いたしました。これは2020年4月1日からの改正です。
この2020年4月1日というのは他の動画でも解説しておりますが、自賠責保険以外に民法が改正されたと、これも非常に重要な点なんですよね。
これですね、交通事故に関しても大きな影響がある改正がございまして、画面にあるように例えば逸失利益、後遺症を負ったりとか亡くなった人に対しての補償、これの大部分を占めるのは逸失利益です。その計算方法が変わりまして、大きく増額になる可能性が増えた点がございます。
また他にも、遅延損害金の利率が変わったりだとか、消滅時効までの期間が変わったりだとか、そういう重要な改正もございます。
これについては、よろしければ私の方で「2020年の民法の改正」、そういった動画もあげておりますのでそちらをご覧いただければと思います。また、2020年4月1日以降の事故かそれ以前の事故か、この点も重要になってきますし、時効とかそういった点については、その一部2020年4月1日以前の事故についても影響が出てくるなど色々ございますので、よかったらまずは弁護士にご相談いただければ間違いないかなと思います。
それでは失礼します。