RSD
1. RSDとは
RSD(reflex sympathetic dystrophy:反射性交感神経性ジストロフィー)とは、交通事故の被害者などが、外傷が治癒した後も交感神経が働き続けることで、疼痛、腫脹、関節拘縮などが残る後遺症のことです。
なお、RSDと類似した症状として、カウザルギーと呼ばれる傷病があり、これらを併せてCRPS(complex regional pain syndrome:複合性局所疼痛症候群)と呼ばれます。
疼痛の3類型
疼痛とは、ようするに「痛み」という意味ですが、交通事故を原因とする疼痛(痛み)には、「受傷時疼痛」、「慢性疼痛」、「神経因性疼痛」の3種類があります。
「受傷時疼痛」とは、ケガをしたときに当たり前に生じる痛みで、たいていは治療をすれば治ります。しかし、骨折に伴う筋肉や神経の損傷に起因する「慢性疼痛」や、神経そのものが激しく損傷した際に生じる「神経因性疼痛」は治療をしても治りにくく、後遺障害と認定される可能性があります。
RSDは、「神経因性疼痛」に分類される疼痛です。
2. RSDの問題点
RSDは、神経損傷にかぎらず、骨折、捻挫などのあらゆる外傷から生じます。そのため、捻挫などの軽い外傷にもかかわらず、RSDによって強い痛みが残る場合も少なくありません。
このように、RSDは、患者の痛みを中心とする主観的症状であるうえ、発症に至るメカニズムが十分に明らかでなく、発症する時期が遅いという特徴もあるため、RSDと判断することは容易ではありません。
3. RSDの症状
RSDの代表的な4つの症状として、以下の症状が挙げられます。
- 灼熱痛と表現される疼痛(鋭い痛み)
- 体の一部(外傷を受けた部位)の腫張
- 骨の委縮による、関節の可動制限
- 皮膚の変色(症状は、発赤・チアノーゼ・蒼白へと進行します)
これらの症状が酷い場合には、手指が痛みで動かないことがあったり、重いものが持てなかったり、頭痛や耳鳴りがしたり、発汗異常が生じるなど、日常生活に支障が出る場合もあります。
4. RSDと認定されるためのポイント
RSDとされる疾患のなかには様々な病態が混在しているため、RSDとされる診断基準はいまだ確立されていませんが、次のような基準が提唱されています。
- Kozin らの診断基準
- Gibbons らのRSD スコア
- IASP の診断基準
ただ、いずれの基準を採用するにしても、医師と十分に相談したうえ、上記の特徴的な症状等を明確に診療録に残しておく必要があります。また、自覚症状の診断のみならず、サーモグラフィ等の客観的な検査も取り入れることが望ましいとされます。
5. RSDと認められれば
RSDと認められれば、その障害の程度に応じて、以下のような後遺障害の等級が認定されます。
この各等級によって、逸失利益や後遺症慰謝料としての損害賠償の金額が異なってきます。後遺障害の等級と損害賠償の金額との関係については、こちらの解説をご覧ください。
等級 |
障害の程度 |
7級4号 |
神経系統の機能又は精神に 障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの |
9級10号 |
神経系統の機能又は精神に 障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの |
12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |