遷延性意識障害(植物状態)
1. 遷延性意識障害とは
遷延性意識障害(植物状態)とは、交通事故の被害者等が、覚醒はしているが、認知していない状態が3か月以上継続している状態のことです。
具体的には、次の症状が、治療にもかかわらず3か月以上続いた状態をいいます。
- 自力移動が不可能である。
- 自力摂食が不可能である。
- 糞・尿失禁がある。
- 声を出しても意味のある発語が全く不可能である。
- 簡単な命令には辛うじて応じることもできるが、ほとんど意思疎通は不可能である。
- 眼球は動いていても認識することはできない。
2. 遷延性意識障害と認められれば
遷延性意識障害と認められれば、通常は後遺障害等級1級が認定されます。
後遺障害の等級によって、逸失利益や後遺症慰謝料としての損害賠償の金額が異なってきます。後遺障害の等級と損害賠償の金額との関係については、こちらの解説をご覧ください。
3. 相手方・保険会社との交渉の際の問題点
遷延性意識障害の場合、重篤な後遺障害として、賠償額も高額になります。
たとえば、自賠責保険会社に対しては、後遺障害等級1級が認定されますと、上限4000万円まで、補償を受けることができます。また、相手方や任意保険会社に対する請求も、基本的に高額になります。
ところが、このような場合には、相手方や保険会社にとっても大きな負担となるため、相手方や保険会社からの損害賠償の提示額が不当に低い場合もあります。たとえば、相手方や保険会社からは「寝たきりなのだから、そこまでの手厚い介護の必要はない。」などと主張される場合もあります。
ご家族にとっても、今後の介護は大変な問題ですから、相手方や保険会社からの提示額が妥当かどうか、すくなくとも一度は、弁護士に相談すべきです。
【動画】交通事故の遷延性意識障害の賠償金について
交通事故で、脳に傷害をおってしまい、意識がもどらなくなってしまった場合、いわゆる「遷延性意識障害」という非常に重い後遺症が残ってしまった場合、御家族は、保険会社とどのように対応すべきでしょうか。
この場合、手続的には、被害者が未成年の場合には親権者が、成年の場合には、成年後見人が被害者の法定代理人となります。
そして賠償額については、慰謝料、逸失利益、将来の介護費等の金額がそれぞれ数千万円になることがあり、その結果、正当な賠償額が1億円を超えることも珍しくありません。
ただ、保険会社が、正当な賠償金を提示するとは限りません。
なぜなら、先ほどの「慰謝料」とか「逸失利益」(将来の稼ぎが失われたという損害)とか「将来の介護費」とかは、現時点ではいわば「目に見えない」「分かりづらい」あるは「法的に解釈の余地のある」損害ですので、「法的にはいくらが正しいのか」というのは、素人にはよく分かりません。
その結果、素人である被害者側は、保険会社が「これが最大限です」といって提示してきた金額に納得してしまうことがあるのです。
例えば、保険会社が提示した賠償額は5,000万円でしたが、弁護士に依頼して交渉することによって1億円を超える金額になったという事例もよく見られます。
御本人にとってはもちろん、ご家族にとっても、将来の介護というものは大変な問題です。
そして、示談というのは、一度してしまうと、あとから「知らなかった」といっても原則として覆ることはありませんし、また、追加の請求もできません。
相手方や保険会社からの提示額が妥当かどうか、かならず一度は専門家弁護士に相談すべきだと思います。